土曜日, 2月 03, 2007

ホワイトカラーなんちゃら②; ジョブディスクリプション

前回の続きです。①はこちらをご覧ください。

今回は、経団連の提言のなかにもあった、『アメリカ
の制度』とはどんなものか、私の見知ってる範囲でお
伝えしますね。


ただし、


ホワイトカラーなんちゃらという制度がその名を以っ
て定義されているか、などと難しいことはわからない
筆者です。

あくまで現実的にどんな感じで運用がなされているか、
ということとお伝えすることが主眼ですから誤解のな
いようにお願いしますね。


まず、アメリカの労働・雇用を語る上で、日本とは決
定的に異なるものについて記す必要があるでしょう。

決定的に異なり、かつ、入り口部分の話で、これが
ないと始まらないというアメリカの労使契約。







ジョブディスクリプション





職務内容説明書、という略にでもなるでしょうか。

これは雇用主と労働者を結ぶ超超超重要なもので、
こういうものがアメリカにあって、日本にはない。この
時点で、アメリカの制度を日本にも導入しよう、とい
うには無理があるな、、、と筆者は思うわけです。

説明書とは言っても、一般論が書かれているわけで
ありません。しかも、個人個人、全員に作成されます。

筆者にもあります。

配布される、ではなく、作成されるのです。最終的に
はサインをする必要がありますから、これ自体も労
使契約のステップとして組み込まれています。


実際に書かれていることは、


役職

職務内容(期待される要件)

その遂行に必要とされる能力

などなど



実際、かなり細かいです。

あんたの仕事(達成要件なども含めることもある)、
役職、必要とされる能力はこうだよ、と会社が個人
個人に提示してきて、働き手が正しく認識する(いや
ならいやと言えばいいし、無理なら諦めるしかない)

ただし、このジョブディスクリプションには給与は書か
れません。それはまた別途交渉です。

つまり、ジョブディスクリプションで仕事などを明確に
した上で、その人のキャリアや資格、能力などを加味
し、最終的に給与が交渉のち決定されるというわけで
す。

雇用者は、ジョブディスクリプションに定められている
こと以外やりません。

逆に、定められていること以外を少しでも依頼しよう
ものなら、本気とも冗談ともつかぬ口調と表情で、


『いくらくれるんだ』


とか聞いてきます。がめついととるか、仕事に対する
プライドがあるととるかですが、私は後者だと感じてい
ます。

給与は労働の対価なわけで、その(ジョブディスクリプ
ションに定められた)仕事に全力で取り組んで金を稼
いでいるわけです。その仕事に、その人の専門性があ
るのです。それを急に、これもやってと言われるのは、
馬鹿にすんなということなのでしょう。

逆説的に言えば、『金じゃないんだ』と主張なのかと。

金をくれないことをわかって聞いている時点で、『いや
だ』と言っているのですから。

また、ジョブディスクリプションに書かれたこと以外をや
ることで、誰か他の人の仕事を取ってしまうかもしれな
いという可能性があるので、余分なことはしません。

良かれと思ってやっても、それが他の人の仕事だった
ら、余計なことすんなってトラブルになりますから。

具体的なことは書きませんが、筆者も一度だけ普段は
かけらもない親切心を出してあることをやったところ、
『それは私の仕事だからあなたはやらないでください』
とローカルスタッフに言われたことがあります。



なお、日本版ホワイトカラーなんちゃらで話題になった、
残業うんぬんについてですが、アメリカでは残業代は
一切支払われない、という理解が蔓延しているようで
すが、それは大きな間違いです。

一定の必要要件を満たしたケースにおいてのみ、残
業代の支払いが免除されます。

賃金も一定要件とされているはいるものの、実際に
は職務内容・ポジション・専門性が重視されるようで
す。

詳細は、こちらがとても役に立ちます。


ちなみに、筆者が勤務する秘密の職場の社員は、ほ
とんどが残業代支払い対象者となっているように思い
ます。私の課にいるアシスタントのスタッフも、残業す
れば残業代をきちんと受け取っています。

こうして、ジョブディスクリプションにより、個人の職責
や専門性が確立しているため、アメリカではホワイト
カラーなんちゃらを正しく運用できるわけで、日本のよ
うに、上司の匙加減(機嫌?)や年齢でいくらでも変わ
る曖昧な職責の範囲では、制度を無理やり作っても、
その運用は困難であると思います。




昨今日本でも言われる、





職務給




というのは、アメリカではこれまで述べたようなものを経
て決まっているのです。

最近は日本でも職務給制度を導入するところもあるよう
ですが、実質的に年功序列がベースとなっている限りは
中途半端なんですよね・・・

もともと入社時点で、『俺はその仕事をやるために入った
んだ』、という(特に文系の人間)人が少ない中では、途中
からの制度導入は非常に困難なことだろうと直感的に思
います。


なぜなら、営業をやりたくて入社したのに、企画をやらさ
れて、挙句の果てには職務給制度を導入するからあなた
の企画としてのポジションと給与はこれだよ、サインして
と突然言われてもおいおいちょっと待て、、企画やりたく
て入ったわけではない!となるでしょう?さらにその給与
が、もともと自分が入社時から強く希望していた営業職よ
りも低いものであったらどうなりますか?

俺を当初からの希望通り営業にうつせ!という主張が生
まれ、それがいろんなことろで巻き起こるわけです。


銀行や金融機関がいい例です。職務が数多とある業界
にもかかわらず、中途採用の門戸を次第に開放している
とはいえ、採用の入り口は未だに一括採用の新卒がメイ
ン。

その新卒社員が為替のディーラーになろうが、外為の事務
をやろうが、支店窓口をやろうが、融資担当になろうが、給
与は新卒一括りの10うん万数千円で、30後半まで何の差
もつかずいるところがほとんどです。

仕事ありきで人をとろう、ではなく、とにかく頭数を揃えるこ
とが必要だ、という状態を露呈しています。



筆者の思うのは、差がないことが悪い、というのではないで
すからね。そこを誤解ないように・・・



年功序列も、職務給導入の際に大きな障害となります。

年齢を重ねていることによる経験は大事ですが、その経
験は事後的に、その人の仕事の結果に表れる、という前
提に立った場合、最初からベースサラリーに『年齢』という
上乗せ枠を設ける理由はないように思います。



年齢に対して、先払いする必要はない、ということです。



なぜなら、経験豊富な人は結果を出せる可能性が高いの
ですから、事後的に、報奨的なボーナスをうんともらえる可
能性も高いわけです。それなのになぜこうも、年齢による格
差を所与として制度が作られているのか。


ゴールドマンサックスという世界有数の金融機関の共同経
営者(役員とかそんなレベルではないもっと上のエグゼク
ティブ)に31歳でなった松本大氏。すごいですよね、超巨額
の収益をゴールドマンにもたらしたのでしょう。

松本氏は賞賛されるべき人ですが、31歳を共同経営者と
して認めたゴールドマンもまた、賞賛されるべき懐の広さを
持っています。日本にはまだこういう大企業はないでしょう。


ホワイトカラーなんちゃらを導入するのなら、時間をかけて、
すべての採用を、ジョブディスクリプションを伴った職務給制
に基づいて行う必要があるでしょう。


御手洗さんも、『日本は10年くらいかけて職務給制度の定
着をはかるべき』、と文藝春秋(2月)でおっしゃっています。


10年ですよ!!



それを一度でいきなり法制化しようとした今回、いくらなんで
も無理がありました。 その前にやるべきことがあったわけで
すね。

10年以内に法制化するために、今から腰を据えて取り組もう!
と行きましょう。



今日の激写;
なし