土曜日, 8月 05, 2006

吉村 昭

高校生の時分から現在に至るまで、この作家の作品
を時間かけて読んできました。

その作風は派手とは無縁、それどころかむしろ地味
すぎて読者を選び、それでいて小説と呼ぶには軽す
ぎる内容の作品を多く傑出した氏、先月末に故人と
なりました。

一読者として哀悼申し上げます


読書以外にまともな趣味のない筆者ですので、地を
出して、今日は氏を主役にしたいと思います。

亡くなったというニュースを聞いたときに初めて知っ
たのは、役所広司主演で、カンヌ映画祭という映画
の批評家達のための祭典でトップ賞をとった"うなぎ"
という作品の原作も氏が書いているということ。

筆者はこの映画を見ていませんが、さぞかし暗いこ
とでしょう・・・。


筆者が初めて氏の作品に出会ったのは高校3年く
らいの時でしょうか。父がこれはすごいぞと薦めて
きた時のことを覚えています。




破獄



当時はまず、ちょいと怖い表紙に引きましたが、内
容は今読んでも比類なきその文章力に感服です。
そうは言っても読者を選ぶと思います。つまんない、
という人も多いのではないでしょうか。まぁ、本はそう
いうものですから・・・。

確かその次に読んだのは、しばらく経ってからです。
社会人になってからでした。





冷い夏、熱い夏



おそらく経験した人でないとわからないのでしょうね、こ
の本の内容は。でも、だからこそ本から経験を得ること
ができるのだと思います。


これ以降、立て続けに読みました。




星への旅



破獄とはうって変わって美しい表紙ですが、内容
はとんでもなくダークです。読後感が悪く、得るも
のもなかったですがとにかく強烈な印象が残りま
した。短編集ですが内容はどれもよく覚えていま
す。


続いて昭和戦争モノ、



零式戦闘機


戦艦武蔵


記録文学とはこういうものなのでしょう。どこまでが
本当のこでどこまでが脚色なのか、もうどうでもよく
なってくるくるほど微に入り細を穿つ記述です。ただ
少なくとも、日本人の本質はこの書に描かれている
と思いました。興味と暇がある人にオススメします。
万人受けはしません。


次の2作は日本人なら読んでおくべきかと・・



関東大震災


三陸海岸大津波



後者はまだ中公文庫から出版されていた時、
社会人になるかならないかくらいの時に読み
ましたが、津波の実態はこれで知りました。
臨場感たっぷりです。三陸地方の方言たっぷ
りの地元の方の証言のせいか、生々しいです。

スマトラ沖地震の後に、現在の出版元である
文藝春秋に、翻訳して海外で発売する機会は
ないのですか、と聞いてみましたが、”今のとこ
ろございません”と即答されてしまいました・・。
失望しました。私が翻訳すればいいのかしら。


これが私が読んだ氏の作品です。歴史モノは
一切読んでおらず、それでいて偉そうに氏を語
るのもおこがましいですが、よいものはよい。

これらを読むと、作家になるハードルは高い、と
いやでも思うわけです。


合掌


今日の激写;
なし